バーバラ・ストライバンドも行った事で話題に。クローンって?!

東野圭吾の作品『分身』でも題材となった"クローン"。
バーバラ・ストライバンドが昨年14歳で亡くなった愛犬のサマンサの細胞を使い、新たに2匹のサマンサのクローン犬を誕生させたことで話題となっている。

クローンとは何か、なぜクローン技術により人を生み出すことが禁止されているのか取り上げていきたい。

そもそもクローンって?!
「遺伝的に同一の個体や細胞」のことを言う。体細胞クローンは無性生殖により発生する。無性生殖は同じ遺伝子が受け継がれるため、有性生殖の場合のように偶然の組み合わせによる多様性はなく、同じ親から産生された個体同士はすべて同じ遺伝子を持つクローンとなる。

つまり、同じ細胞から全く同じ個体を作り出すことを指します。

これを応用していけば医療や食料の分野で幅広く活用していけるのです。
例えば食料に関しては、綺麗な質のいいお肉や綺麗な卵を産む鳥を効率よく大量に生み出すことができ、医療では不妊夫婦の子供の出産、 科学的研究や移植用臓器の作製に応用できるという訳だ。
このようにクローン技術を応用していけば私たち人間の暮らしに大きな変化をもたらす。

では、何故禁止をするのか
それは、安全面・倫理の問題があるからだ。

まず安全面においては、子孫への影響面においてまだまだ明らかになっていない領域が多く、更に未知のウイルス感染などの危険性についても立証できるものがなにもなく高リスクであるから。

そして一番取り上げられることの多い倫理の問題に関しては、
特定の表現形質を持つ人を意図的に作り出すことは、人間の育種(特定の優れた形質の人を生み出す品種改良)につながる。
特定の目標達成のために特定の表現形質を持つ人を作り出すことは、生まれてくる人を手段、道具と見なすことにつながる。
人の生命の誕生に関する一般的な認識(両性の関与、偶然性の介在等)から逸脱する。
クローン技術により生み出された人と、男女の関与によって生み出された人との間に差別が生じる可能性がある。
生まれてくる人が安全に成長することが保証できない。

とされており、クローンによって新たな人間の生命を誕生させることは禁止されているのだ。

見た目は一緒、では"中身"は?
クローン実験を人間の生命の誕生に用いられることはないが、動物の新しい生命の誕生には用いられている。
バーバラ・ストライバンドが昨年14歳で亡くなった愛犬のサマンサの細胞を使い、新たに2匹のサマンサのクローン犬を誕生させたニュースを見て気になった人もいるのではないだろうか。

個体の見た目は一緒でも、個体の"中身"つまり性格や個性は一緒なのか?


家族の愛犬を蘇らせる飼い主は、またあの子に会いたいという心理が大きいのだろう。しかし、残念ながら個体の見た目は同様でも、個体の性格、個性は全く異なるのだ。外見も性格も同じ犬であるように思われるが、必ずしも"オリジナルの犬"と同じ行動を取ることはく、外見すら同じとは限らない。

クローン技術によって作り出された新たな犬の生命は、全くの別の犬の新しい生命である。


飼い主の勝手な"愛犬を蘇らせたい" "永遠の命を与えたい"という願望から新たに誕生させられる、生命の尊厳はどこにいくのか。

顔は似ているが、中身は全く違う個人である彼らたちを、以前の愛犬とは別の犬として認め愛してあげることができるのか。


"生まれてくるはずのなかった"彼らを作り出し、彼らを幸せにし、新たな一個人と認め愛を与え幸せにしていける覚悟があるのだろうか。以前の愛犬を求め同じ"なにか"を彼らに要求してしまわないだろうか。作り出された彼らの人生をどう背負っていくのか難しい所である。


新たな発見
クローン技術において命の長さを決めるとされていた細胞"テロメア"。このテロメアは『命の回数券』と呼ばれており、クローン技術においては特別注目されていた。
それは、"テロメアの長さ"は私たち生き物の"命の長さ"と関与していると考えられていた為である。『テロメアが短いと、寿命が短い』、つまりテロメアが短い=細胞が老化した状態 であるからだ。

有名なクローン羊ドリーはテロメアが短かった為、短命だったと推測され、クローンで誕生させられた生命は短命であると考えられていた。

しかし、2016年7月「クローンであることと寿命が短いことの間には関係性がない」という研究結果が発表された。
それは、ノッティンガム大学の発生生物学者であるケビン・シンクレア氏たちが発表したもので、研究チームは13頭のクローン羊を飼育。老齢になるまで一連の試験を行うことで「クローン羊は単に健康なだけでなく、完全に通常の羊と同じように老化していく」ことを裏付け明らかにしたのだ。

新たな発表で、テロメアは寿命と関与するがテロメアだけで寿命や老化のスピードが決まるわけではない。非常に複雑なしくみがそこにあるのではと示されいる。

クローン実験はまだまだ不明なことな多く日々研究が進んでいる。
クローン技術が進歩し再生医療への応用がどんどん期待される一方で、研究により生み出されてしまったクローン動物たち、"彼ら"の命の尊敬はどうなるのだろう。自然に反して人間が新しい生命を人工的に産み出す技術を身につけていくことは本当に良い行いなのだろうか。今後も課題となるだろう。